砂漠は気温が高く乾燥しているので、脱水症状が起こりやすいエリアです。
万が一広大な砂漠の真ん中で、水や食料などを抱えていたラクダに逃げられて遭難をしてしまった場合、一刻も早く水を確保する必要性があります。
ただ、雨も降りづらい砂漠でどのように水を確保したら良いのでしょうか。
本記事では、砂漠で水を確保する方法、水を作る新しい技術をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
砂漠で水を確保する3つの方法
砂漠で水を確保する方法を3つご紹介します。
砂漠では、やみくもに水を探しても見つけることは困難です。
なぜなら砂漠とはそもそも、雨が降りづらい上に乾燥している場所だからです。
そんな悪い環境下で水を確保する方法をポイントを押さえながらご紹介します。
1. オアシスから水を確保する
オアシスとは、砂漠の中で水が湧き出し、草や樹木が生えている場所です。
水を大量に確保できるので砂漠で水を採取するのに最も良い場所と言えます。
オアシスは山がある方向にある可能性が高いので、できるだけ高い場所で山がないか探しましょう。
では、なぜ山がある方向にオアシスがあるのでしょうか。
砂漠は降水量より蒸発量のほうが多いため、雨をためて水源とすることができません。
しかし、砂漠の周辺にある山に降った雨や雪は、やがて砂漠の地下水になります。山の近くにできた地下水がオアシスの水源となるのです。
2. 植物から水を確保する
植物は水分を含んでおり、わずかではありますが水を確保できます。
サボテンなどの植物にビニール袋を被せることで、植物から蒸発した水分がたまり、飲み水の確保が可能です。
できるだけ高い場所へ行き、緑色がないか確認しましょう。
ただし、オアシスと比較すると確保できる量は少ない点は覚えておきましょう。
3. 地下水から水を確保する
地下水を探すためには2つのポイントがあります。
1. 山や植物がある場所を探す
1つめは、山や植物の近くに地下水がある可能性が高いという点です。
前述したように、山がある場所には地下水がたまりやすく、植物が育つ場所の近くには水源があるため、地下水がある可能性が高いと言えます。
2. 砂が白くなっている場所を探す
2つめは、砂が塩で白くなっている場所に地下水がある可能性が高いという点です。
地下にたまった水が蒸発した後の砂は、塩が残り白くなります。砂が塩で白くなっている場所を掘ることで、地下水が見つかる可能性が上がるでしょう。
ちなみに、この地下水を活かした水利技術に「カナート」と呼ばれるものがあります。
カナートとは、地下水があるところまで掘り、横に地下水をひくトンネルを作ることで、さまざまな場所から水を確保できる技術です。
押さえておきたい砂漠の特徴
乾燥して暑い場所というイメージが強い砂漠。
しかし、実際には日中と夜間の寒暖差が非常に厳しく、日中の平均気温が30度を超えていても夜間には氷点下まで冷え込むことがあります。
そして、この寒暖差の影響で湿度が高くなるのです。
ここからは、そのような砂漠の特徴をご紹介します。
昼夜の気温差が大きい
日中と夜間の寒暖差を引き起こす一つ目の要因は砂の特徴です。
砂は太陽の熱を浴びると、砂の最上位層が熱を吸収して放出し、周囲の空気の温度を上昇させます。
しかし、砂は熱をためこむことができないため、夜になって太陽が隠れると一気に冷たくなってしまうのです。その結果、日中と夜間で寒暖差が大きくなります。
二つ目の要因は乾燥です。
乾燥することで湿度が下がり、湿度が下がることで、熱を蓄える力も下がります。
湿度が保たれている環境の場合、熱を蓄える力があるため、夜間でも極端に気温が下がることがありません。それに対して砂漠のような湿度が低い環境では、熱を蓄える力が弱くなるため、夜間になると極端に気温が下がってしまうのです。
気温が下がることで湿度が上がる
湿度には絶対湿度 と相対湿度 があります。
- 絶対湿度…空気1立方メートルに含まれている水の量を表す。
- 相対湿度…空気が含むことが出来る水の量に対して実際に含まれている水の量を表す。気温が高いと空気が含むことができる量は多くなり、気温が低いと少なくなる。
砂漠は前述のとおり湿度は低いのですが、これは絶対湿度のことです。
夜間になると気温が非常に下がる砂漠では、空気が含むことが出来る水蒸気量が減って水蒸気が水滴となって出てきます。結果、相対湿度は高くなるのです。
砂漠の湿度を活用!水を作る新しい技術をご紹介
湿度を活かすことで、水を作りだす技術が近年開発されております。
技術が進化することで、砂漠に関わらず災害時など必要な時に簡単に水が作れる時代が来るかもしれません。
空気から水を作るパネル
アリゾナ州スコッツデールにあるソース・グローバルという企業で、大気から水蒸気を取り込むことができるという「ハイドロパネル」が開発されました。
このパネルを使用することで、1日最大5リットルもの水を作り出せるのです。
パネルには吸水性の素材が使われており、大気中の霧から水分を吸着します。
太陽熱で霧から水滴を作り、水滴が貯水槽にたまる仕組みです。
ただ、このパネルの重量は優に100kgを超えるので気軽に持ち運びはできません。
超多孔質材料と太陽光で水を作る
超多孔質材料は「金属有機構造体」と呼ばれる結晶です。
この超多孔質材料と太陽光を組み合わせることで水を作り出す技術が、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究チームによって開発されました。
この技術を活かすことで、1日約2.8リットルの水を作り出せます。
既存の水の吸着材料の多くは湿度が40%以上でなければ水蒸気の吸着性が低くなっています。対して超多孔質材料は、湿度約10%という非常に低い湿度でも高い吸着性や保水性があるという特徴があります。
超多孔質材料は、水蒸気を付着させ太陽光を1〜4時間あてると温度が66°前後に上昇します。
この結果、吸着した水分を再び水蒸気の形で吐き出し、吐き出された水蒸気を結露させ、その水を採取する仕組みです。
空気から水を作るこんにゃくゼリーフィルム
テキサス大学オースティン校で材料工学を研究している研究チームが、食物繊維であるセルロース、コンニャクの主成分であるグルコマンナンからできたフィルム「高吸湿性ポリマーフィルム」を開発しました。
フィルム1kgに対し、湿度15%未満でも1日6リットル、湿度30%だと1日13リットルもの水を作り出せます。
高吸湿性ポリマーフィルムを60度の温度で10分加熱するだけで、吸収した水分の70%を取り出すことができます。
コンニャクの主成分であるグルコマンナンが水を捕捉し、セルロースが熱に反応して水をはじくことで、水を確保する仕組みです。
高吸湿性ポリマーフィルムは、1kg当たりたった2ドルの安価な素材を使用しています。
また、単純な技術かつ手軽に持ち運びもできるため、近い将来ホームセンターで普通に市販されるようになる可能性もあります。
ポイントを押さえて水を確保することが重要
砂漠で水を確保する方法をご紹介しました。
砂漠で遭難した際は、やみくもに水を探すのではなく、本記事でご紹介したようなポイントを押さえることが重要です。一刻も早く水の確保を行い、脱水症状にならないようにしましょう。
近年は地球温暖化に伴う水不足、気象災害が起きる可能性が高まっています。
今回ご紹介したような水を作る技術開発は、私たちの命を守る重要な開発であることを覚えておきましょう。