水道の蛇口やシンク、加湿器などに付着した白い頑固な汚れのことを「カルキ汚れ」と呼ぶのが一般的です。
拭き掃除で簡単に落とせる汚れではないため、気になっている方も多いのではないでしょうか。
そんなカルキ汚れを落としやすくするには、汚れの正体を知り、相性のよいアイテムを使うのが一番です。
今回はカルキ汚れの正体や、クエン酸を使った掃除方法についてご紹介します。
カルキ掃除の注意点やカルキ抜きの方法もまとめましたので、カルキ汚れでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
カルキって何?カルキ汚れを防ぐには
カルキ汚れと呼ばれる白い汚れの元になっているのは、水道水に含まれている成分です。
そのためカルキ汚れは、シンクや蛇口、電気ポットや加湿器など、水道水を使う場所で発生します。
まず、カルキとはどんなものなのか、カルキ汚れを防ぐにはどうしたらよいのかを見ていきましょう。
カルキ汚れの正体
一般的にカルキ汚れと呼ばれる白い汚れの正体は、水道水に含まれるミネラルがたまったものです。
水道水には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどのミネラル成分が含まれています。
水道水の水分が蒸発するとミネラル成分だけが残るため、蛇口やポットなどに白い汚れとして残るのです。
ミネラル豊富な水道水が出る地域では白い汚れがつきやすく、温泉の出る地域では色や硬さの異なる汚れがつきやすい傾向にあります。
白い汚れはカルキ汚れではなく「水垢」
実は、水道水中のミネラル成分による白い汚れは「水垢」であり、厳密には「カルキ汚れ」ではありません。
カルキとはドイツ語の「クロールカルキ」を略した言葉で、「次亜塩素酸カルシウム」のことです。
アルカリ性の白い粉末であるカルキは、水に溶かすと漂白作用や殺菌作用があることから、プールの水の消毒などに使われています。
過去には水道水の消毒・殺菌に固体のカルキを使用していましたが、現在使用しているのは液体の「次亜塩素酸ナトリウム」です。
現在の水道水に「カルキ」は含まれていないため、白い汚れはカルキ汚れではなく「ミネラル汚れ」であり、「水垢」ということになります。
とはいえ、水道水を塩素系の薬品で消毒・殺菌しているのは同じであり、蛇口などの白い汚れを「カルキ汚れ」と呼ぶのが一般的です。
混乱しないためにも、この記事では水垢とカルキ汚れを同じものとして説明していきます。
カルキ汚れを防ぐコツ
水道水がついた部分をふき取って乾燥させるようにすると、カルキ汚れがつきにくくなります。
水道水をふき取ることで、カルキ汚れの元になるミネラル成分もふき取れるからです。
蛇口やシンクの水滴など、「濡れたところは拭く」を習慣にするとよいでしょう。
また、こまめに掃除をすることも大切です。
カルキ汚れは放っておくと落とすのが難しくなるため、定期的に掃除をするように心がけてみてください。
ちなみに、一般的な浄水器は塩素は除去しますが、ミネラル成分は除去しません。
カルキ汚れの正体は水道水中のミネラル成分です。
一般的な浄水器を使ってもカルキ汚れの防止にはならないことを覚えておくとよいでしょう。
カルキは酸性?アルカリ性?カルキ掃除と相性のいいアイテムはクエン酸!
カルキ汚れを落とすには、カルキと相性のよいクエン酸を使うのが一番です。
カルキ汚れの元となる成分はアルカリ性なので、クエン酸などの酸性のアイテムを使うと中和反応によりやわらかくすることができます。
身近な酸性の液体にはレモン果汁やお酢などがありますが、水回りの掃除に使うのは気が引けるかもしれません。
そこでおすすめなのが粉末のクエン酸です。
ドラッグストアやホームセンターなどで入手できる掃除用のクエン酸を使いましょう。
ただし、パッケージに「掃除用」と記載されたクエン酸は「食用」ではありません。
食用のクエン酸も掃除に使うことができますが、食用として使う場合は「食用」クエン酸を選んでください。
クエン酸でカルキ汚れを落としたい!アイテムや場所ごとの掃除方法を解説
ここでは、クエン酸を使ったカルキ汚れの落とし方をアイテム・場所別に説明します。
白くこびりついたカルキ汚れは、クエン酸水で中和させてやわらかくしてからこすり落とすのが基本です。
ガンコな汚れにはやや濃いめのクエン酸水を使う、放置時間を長くするなどで工夫してみてください。
加湿器
加湿器のカルキ汚れを落とす場合は、まず水洗い可能な外せるパーツを確認することが大切です。
外せるパーツはメーカーによって異なるので、必ず分解前に取扱説明書を確認しましょう。
<用意するもの>
- クエン酸
- パーツが浸かるサイズのバケツやおけ
- スポンジと掃除用歯ブラシ
- 水またはぬるま湯
- ゴム手袋(手荒れ対策)
<カルキ落としの手順>
- カルキ汚れの気になるパーツ(トレイ、給水タンク、フィルタ―、フタなど)を外す
- バケツまたはおけなどにぬるま湯または水を入れる
- ぬるま湯(水)1Lに対しクエン酸大さじ1杯程度を入れて溶かす
(汚れがひどい場合はクエン酸を増やす) - パーツをクエン酸水に浸し1~2時間程度おく
(パーツが浮いてしまう場合は重石をのせてしっかり沈める) - スポンジや歯ブラシで汚れをこすり落とす
- 水でよく洗い流して乾いたタオルで拭く
- 十分乾燥させたらパーツを本体に取り付ける
この方法で落としきれない場合は、数回にわけて少しずつ掃除しましょう。
電気ポット
電気ポットのカルキ汚れを落とす場合は、まず取り扱い説明書を確認します。
「クエン酸洗浄モード付」タイプもあるので、製品に合わせて正しい洗浄方法を行いましょう。
<用意するもの>
- クエン酸
- 水
- スポンジと掃除用歯ブラシ
<カルキ落としの手順>
- ポットの満水ラインまで水を入れる
- 水1Lに対し大さじ1杯のクエン酸を入れる
- フタをしてスイッチを入れてお湯を沸かす
- 沸騰したら保温モードにして最低でも1時間おく
(汚れがひどい場合は3時間~一晩おく) - 給湯ボタンを押してコップ1杯程度のお湯を捨て、給湯口にもクエン酸水を通す
- すべてのお湯を捨てる
- 内部はスポンジで、注ぎ口などは歯ブラシを使って掃除する
- 水でよく洗い流す
- クエン酸の匂いが気になる場合はもう一度満水にして沸騰させる
こすりすぎると製品が傷む可能性があります。
落としきれない場合は同じ手順を繰り返してみましょう。
キッチン
キッチンのシンクや蛇口についているカルキ汚れは、クエン酸パックで落とします。
<用意するもの>
- クエン酸
- 水
- キッチンペーパー
- スプレーボトル
- スポンジと掃除用歯ブラシ
<カルキ落としの手順>
- 水200mlに小さじ1杯のクエン酸を溶かしてスプレーボトルに入れる
- カルキ汚れが気になる部分にクエン酸水をスプレーし、キッチンペーパーを貼り付ける
- その上からさらにスプレーして10分程度おく
- キッチンペーパーを外しスポンジと歯ブラシでこすり洗いする
- 水で洗い流して水分をふき取る
※ただし、シンクや蛇口の素材によってはクエン酸で変質・変色する可能性があるのでご注意ください。
バスルーム
バスルームの鏡やシャワーヘッドのカルキ汚れは、クエン酸パックやつけ置きで落とします。
<用意するもの>
- クエン酸水
- スプレーボトル
- キッチンペーパー
- スポンジ・掃除用歯ブラシ
- バケツ
<鏡のカルキ落としの手順>
- キッチンのシンクの掃除の手順でクエン酸パックする
- スポンジで汚れを落とす
- 水をかけて洗い流し、よくふき取る
<シャワーヘッドのカルキ落としの手順>
- シャワーヘッドを取り外す
- バケツにクエン酸水を入れ、シャワーヘッドを入れて最低1時間おく
- 歯ブラシなどで汚れを落とし、水でよく洗い流してから水分をふき取る
窓ガラス
窓ガラスの汚れを落とす場合は、酸性のクエン酸とアルカリ性の重曹を使う方法がおすすめです。
窓ガラスの汚れには酸性のものとアルカリ性のものがあるため、うまく組み合わせて掃除しましょう。
<用意するもの>
- クエン酸
- 重曹またはセスキ炭酸ソーダ
- スプレーボトル×2
- 水
- 雑巾
- きれいな布巾
<汚れ落としの手順>
- 水200mlに小さじ1杯のクエン酸を溶かしスプレーボトルに入れる
- 水200mlに小さじ2杯の重曹を溶かしスプレーボトルに入れる
(セスキ炭酸ソーダの場合は水200mlに小さじ1杯程度入れる) - 窓ガラスに重曹水またはセスキ炭酸ソーダ水をスプレーして3分程度おく
- 濡らして絞った雑巾で汚れをふき取る
- 窓ガラスにクエン酸水をスプレーして3分程度おく
- きれいな乾いた布巾で水分をふき取る
クエン酸でカルキ掃除するならここに注意!
クエン酸を使ってカルキ掃除する場合は次の点に注意が必要です。
- 塩素系漂白剤と混ぜない
- 素材に注意する
- 最後に洗い流す
クエン酸を掃除に使うときは正しい使い方を覚えておきましょう。
塩素系漂白剤と混ぜない
クエン酸は、絶対に塩素系の製品と混ぜてはいけません。
酸性のクエン酸とアルカリ性の塩素系製品を混ぜてしまうと、強アルカリ性の有毒ガス(塩素ガス)を発生させるからです。
万が一塩素ガスが発生すると、目や皮膚、喉に痛みを感じたり、気分が悪くなったりすることがあるため十分注意してください。
「混ぜるな危険」の表記がない塩素系の製品もあるので、クエン酸を使うときはクエン酸だけにすることをおすすめします。
素材に注意する
クエン酸は酸性のため、次のような素材には不向きです。
- 金属(鉄・銅・アルミニウムなど)
- 大理石
- セメント(コンクリート)
金属にクエン酸を使うとサビの発生や変色・変質の原因になります。
特に注意したいのは、ステンレスが「酸焼け」を起こして変色する可能性があることです。
ステンレスの酸焼けとは、ステンレスがクエン酸水などの酸性の液体と化学反応を起こして変色することをいいます。
酸焼けで変色した場合はどんなにこすっても元に戻せないので注意してください。
また、ホーロー製品の内側はアルミニウムや鉄といった金属です。
表面にキズや割れがあるような場所へのクエン酸の使用は避けるとよいでしょう。
大理石やセメントの場合は、クエン酸によって表面が溶けたり劣化が早まったりすることがあります。
クエン酸で掃除する場合は、取扱説明書を読んだりメーカーに問い合わせるなどで、クエン酸を使える素材かどうか確認すると安心です。
最後に洗い流す
カルキ汚れをクエン酸で掃除したら、最後に水で洗い流すことが大切です。
クエン酸は弱いとはいえ酸性なので、付着したままにしておくと掃除したアイテムや場所が変色・劣化する可能性があります。
必ず掃除の最後に水でしっかり洗い流してください。
またカルキ汚れをためないためにも、洗った後しっかり水分をふき取ることも覚えておきましょう。
カルキ抜きが必要なのはどんなとき?カルキ抜きの5つの方法を解説
水道水は塩素系の薬品で殺菌・消毒してあるため、場合によっては「カルキ抜き」が必要です。
ここではカルキ抜きが必要なケースとカルキ抜きの方法について説明します。
こんなときはカルキ抜きが必要
カルキ抜きが必要なのは次のようなケースです。
- 水道水の臭いが気になるとき
- 魚を飼育するとき
- 水道水の臭いが気になるとき
水道水には残留塩素が含まれているため、塩素の臭いが気になる方も少なくありません。
水の臭いのせいで「飲むと不味い」「料理が美味しくない」と感じる方もいるでしょう。
カルキ臭=塩素の臭いではなく、水道水の臭いの元すべてが塩素ではありません。
しかし、カルキ抜きによって臭いが軽減されることがあります。
水道水をそのまま飲むときや料理に使うときなどは、まずカルキ抜きをしてみるとよいでしょう。
魚を飼育するとき
金魚やメダカ、熱帯魚などの魚を飼育するときは、カルキ抜きが欠かせません。
水道水に含まれる塩素などの成分が、魚や水生生物にダメージを与えるからです。
水道水を使って魚などの水生生物を飼育するときは、必ずカルキ抜きを行いましょう。
カルキ抜きの方法
最後にカルキ抜きの方法を5つご紹介します。
- 煮沸する
- 炭を入れる
- レモンを入れる
- 汲み置きする
- 塩素中和剤を入れる
それぞれのメリット・デメリットもまとめましたので、カルキ抜きをするときの参考にしてみてください。
1. 煮沸する
カルキ抜きの最もポピュラーな方法は煮沸です。
やかんやカルキ抜き機能搭載の電気ポットなどを使い、水道水を沸騰させて塩素を飛ばしてカルキ抜きをします。
メリットは、やかんや鍋など身近なアイテムでカルキ抜きできることです。
ただし水道水を煮沸すると、一時的に発がん性物質のトリハロメタンが増加することがわかっています。
増加したトリハロメタンを減少させるには、沸騰後15分~20分程度は沸騰させ続けなければいけません。
常温の水として使うには冷ます必要があり、大量の水道水をカルキ抜きするとなると手間も光熱費もかかります。
煮沸のデメリットはコスパが悪いことといえるでしょう。
2. 炭を入れる
備長炭や竹炭を使ってカルキ抜きする方法です。
どちらもミネラル成分を含んでおり、水道水の臭いや不純物を除去するだけでなく、美味しい水になるというメリットがあります。
カルキ抜きをするには、炭を水洗いして煮沸消毒を行い、よく乾かしてから水道水に入れて24時間おかなければいけません。
冷蔵庫で保存しても12時間程度かかるため、手間と時間がかかるカルキ抜き方法といえます。
3. レモンを入れる
水道水にレモン汁やレモンの輪切りを入れることでもカルキ抜きできます。
レモンに含まれるビタミンCが、気になる臭いの元である塩素を「酸化ビタミンC」という別の物質に変えるためです。
手軽にできるカルキ抜きの方法ですが、水がレモン風味になること、大量の水のカルキ抜きには不向きであることがデメリットといえるかもしれません。
4. 汲み置きする
水道水を日光に当ててカルキ抜きする方法です。
手軽にできてお金がかからない方法ですが、完全にカルキが抜けるまでは時間がかかり、置いている間にゴミなどが混入する恐れがあります。
また汲み置きをすると消毒のための塩素が抜けた状態で放置することになるため、飲用向きではありません。
魚の飼育用の水など、大量にカルキ抜きしたい場合におすすめの方法です。
5. 塩素中和剤を入れる
市販の塩素中和剤を入れてカルキ抜きする方法で、魚の飼育用の水を作るときに便利です。
薬剤を使うため飲用には使えませんが、短時間でカルキ抜きできるというメリットがあります。
カルキ汚れはクエン酸を使って定期的に掃除しよう
アルカリ性のカルキ汚れは、酸性のクエン酸を使って掃除するのがおすすめです。
加湿器や電気ポット、鏡や窓ガラスなどの気になる汚れは、クエン酸を使うことで落としやすくなります。
カルキ汚れは放置する時間が長いほど落としにくくなるので、定期的なお手入れ・掃除を心がけるとよいでしょう。
ただし、クエン酸を使える素材かどうか確認することから始めてくださいね。