水生植物の種類はとても豊富で、水中で育つものから水上で育つものまでさまざまです。
育て方が少し難しそうに思われがちな水生植物ですが、じつは簡単に育てることができます。
ここでは水生植物の種類と育て方、管理のポイントをご紹介します。自分好みの水生植物を見つけて、室内でも屋外でも気軽に楽しんでみましょう。
水生植物とは?
水生植物とは、川岸や沼、湿地帯などの淡水の水中に生息する植物の総称です。
種で増える種子植物や、胞子で増えるシダ植物、またコケ類などを含みます。一般的には「水草」と呼ばれているので、水生植物というよりも水草のほうがなじみがあるでしょう。
水生植物の種類と育て方
水生植物の種類は、生息している環境の違いで「浮遊性」「浮葉性」「沈水性」「抽水性」「湿地性」の5種類に分けられています。
どの種類も、必要な道具や環境を整えるだけで簡単に育てることが可能です。それぞれの種類に適した育て方と特徴を見ていきましょう。
浮遊性の水生植物
浮遊性の水生植物は、葉っぱに浮袋を持っており、水面に浮いた状態で育ちます。
根をはらずにユラユラと漂って育つ浮遊性は、手間がかからずに育てやすいのが特徴です。熱帯性の植物が多く、日がよく当たる暖かい場所を好みます。室内の窓際だけでなく、屋外のビオトープなどでも育てることが可能な種類です。
育てる際は、容器にたっぷりのお水を入れて植物が水に浮くようにしましょう。水をあまりたくさん入れすぎないように注意してください。用土は必要ないので、水質保持のためには、多孔質の石や赤玉土を入れると良いでしょう。
また、メダカと一緒に育てることもできます。メダカと一緒にゆらゆらと揺れる水生植物は見るだけで癒されます。その際に植物の肥料は必要ありません。
その他の注意点としては、育つ環境が良いとよく増えます。増えすぎを防ぐために、こまめにカットして整理するようにしましょう。
代表的な浮遊性の水生植物には、
- ホテイアオイ
- ボタンウキクサ
- サンショウモ
- 白玉浮き草
などがあります。
浮葉性の水生植物
浮葉性の水生植物は、根元を水中に沈めて葉だけを水面に浮かべて育ちます。
花も水面に咲くものが多くあるのが特徴です。
また、メダカや金魚とも相性が良いので一緒に育てることが可能です。日当たりがよくて暖かく明るい場所を好み、屋外のビオトープはもちろんのこと、ベランダの睡蓮鉢(すいれんばち)でも育てることができます。
育てる際には水生植物の土が適しており、荒木田土や硬質の赤玉(中粒)でも可能です。肥料を与える場合は、水生植物専用の固形肥料を使用しましょう。固形なので、土に埋めて与えてください。
代表的なものにスイレンがあります。温帯性のスイレンを育てる際には水温管理が非常に重要です。日当たりの良い場所では、水温を15〜25度を保つと良いでしょう。
スイレンなどは大型で、広い水面が必要になるので育てるスペースを考慮して品種を選ぶようにしましょう。
代表的な浮葉性の水生植物には、
- スイレン
- アサザ
- ウォーターポピー
- コウホネ
などがあります。
沈水性の水生植物
沈水性の水生植物は、植物全体を水中へ沈めて育てます。
花自体を水中で咲かせる種類もありますが、多くは茎を伸ばして水面で花を咲かせ、受粉後に種を水中に撒いて増えます。
育てる際の容器は、大きくなくても構いません。小さなガラス容器などで簡単に育てることができるのでトライしやすいです。
室内だけでなく、ベランダの睡蓮鉢で育てることも可能です。沈水性の水生植物には、土ではなくアクアリウム用のソイルやサンドを使用しましょう。小粒のハイドロコーンや川の砂などでも育てることができます。肥料は液体の専用肥料を与えるようにしてください。
また、観賞魚やメダカと非常に相性が良いので一緒に育てることが可能です。適度な明るさを好みますが、日当たりが悪いと新芽が出てこなくなります。
明るさが不足すると、葉も黄色く変色してしまうので必要に応じてLEDライトを使用しましょう。真上から当てることで側面の藻の発生を防ぐこともできます。数が増えると混み合うので、調整するためにこまめな間引きを心がけてください。
代表的な沈水性の水生植物は
- クロモ
- キンギョモ
- ウィローモス
- セキショウモ
などがあります。
抽水性の水生植物
抽水性の水生植物は、根元だけが水中にあり、茎や葉は水上に出て育ちます。
背が高くなるものが多いのが特徴です。屋外のビオトープやベランダの睡蓮鉢で育てることが多いですが、明るい室内でも育てることができます。
育てる際には、水生植物の土を使用します。荒木田土や小粒〜中粒の硬質な赤玉でも育てることが可能です。基本的に肥料はあまり必要ありません。
しかし、ウォーターバコパなどの花を咲かせる時は、固形肥料を土に埋め込んで与えておくと良いでしょう。
植え付けは直接土に植えても、鉢ごと水に沈めても構いません。葉の根元が水に浸かる必要があるので、水位をしっかりと調整することが大切です。葉の色を綺麗に保つためには暖かくて日があたる明るい場所に置くようにしましょう。
種類によっては横に広がって成長するものがあり、メダカの隠れ家にぴったりの種類です。基本的にはどの種類も伸びすぎないように剪定(せんてい)して、こまめに整えるようにしましょう。
代表的な抽水性の水生植物は
- ウォーターバコパ
- ミズオジギソウ
- フトイ
- ウォータークローバー
などがあります。
湿地性の水生植物
湿地性の水生植物は、根元だけが水に浸かっていれば育つことができます。
陸上にいる植物とあまり変わりはありませんが、根元だけは水中で呼吸できるような仕組みです。屋外のビオトープやベランダの睡蓮鉢だけでなく、鉢植えでも育てることができます。
種類が多く多彩なので、植物に合わせて用土を選ぶようにしましょう。硬質の赤玉土とピートモスなどをブレンドして作ることも可能です。
しかし、肥料や堆肥などは有機物が多く水が腐りやすくなります。予防するために根腐れ防止剤を入れると良いでしょう。
植え付けの際、鉢植えで育てる場合は、普通の草花と同じように植え付けるので構いません。深い受け皿に水を張ったり、二重鉢にして育てます。ビオトープや睡蓮鉢を使用する時は、根の一部を水に浸からせてから植え付けます。
肥料も植物によってまちまちなので必要に応じて与えるようにしましょう。
水の量が少ないこともあり、真夏などに水温が高くなると水が腐りやすくなります。ずっと日が当たるところではなく、明るめの日陰や風通しの良い場所で育てるように注意しましょう。
代表的な湿地性の水生植物は
- 水芭蕉
- イグサ
- ウォーターミント
- カンナ
などがあります。
水生植物の管理ポイント
水生植物にはたくさんの種類がありますが、それぞれに共通する管理のポイントがあります。普通の植物を育てる時とは少しコツが違っていますが、ポイントをしっかり押さえておけば比較的簡単に育てることができるでしょう。
ここからは管理のポイントを4つご紹介します。
1. 水持ちの良い土作り
水生植物の多くは水持ちが良い「粘土質」の土を好みます。
おすすめは、荒木田土か小粒の赤玉土と黒土をお水で練って作ったものを使用することです。市販の肥料も配合されている水生植物専用のものもあるので、手軽に始めたい方はこちらを選んで購入しましょう。
2. 綺麗な水質を維持
水生植物を育てる上で水質を維持することは非常に重要です。多孔質ソイルや石などを使うことで、微生物が働き水質を維持できます。
しかし、真夏などの気温が高い時は水温も上昇して微生物が死滅してしまい、逆に濁って水質が悪くなってしまうこともあるので注意が必要です。遮光ネットを利用するなどの工夫をすることで、水温の管理がしやすくなります。
水生植物だけでなく、メダカや金魚などを一緒に育てる場合には餌の量に注意しましょう。餌を与えることで水が濁りやすくなります。
餌は少なめにして、水の入れ替えを少しずつこまめに行うことで綺麗な状態を維持しやすくなります。
3. 適切な量の肥料
肥料の与えすぎにも注意が必要です。スイレンなどの花を咲かせる植物には肥料が必要ですが、その他の場合は肥料は少なめにしましょう。
また、肥料が多いとアオコなどのプランクトンが発生しやすくなり、光合成の妨げになってしまいます。水生植物の種類にあった適切な量で肥料を与えるようにしましょう。
4. 日光やLDEライトで明るく
植物を成長させるためには、水中と水上どちらでも日光やLEDライトの明るさが欠かせません。
水生植物の種類によっては、長時間の日光が好ましくないものもあるので、植物の性質に合わせて調整するようにしましょう。
日光やLEDライトで明るさを調整することで光合成を促すだけでなく、水温の管理にも繋がります。
水生植物で手軽に癒しの空間が作れる
小さなグラスや睡蓮鉢にお気に入りの水生植物を入れることで、簡単に癒しの空間を作ることができます。
室内だけに限らず、ベランダなどで育てることができる種類もおすすめです。水生植物だけでなく、メダカや金魚などを一緒に育てることでビオトープができ、さらに癒しのスペースになることでしょう。
水生植物はたくさん種類があるので、ぜひお気に入りを見つけてみてください。