蒸留水、精製水、水道水、ミネラルウォーター、純水、超純水など、水にはさまざまな種類があります。
化学式ではどれも「H₂O」と同じです。
しかし、何がどう違うのかうまく説明できるという方は少ないのではないでしょうか。
今回は、蒸留水と精製水の違いについて解説します。
蒸留水の作り方やメリット・デメリットも合わせてまとめました。
おすすめの使い方や注意点を知り、潤いのある毎日を過ごしてみませんか。
蒸留水と精製水はどう違う?純水と超純水の違いも解説!
蒸留水や精製水は、どちらもドラッグストアやカー用品店などで入手することができます。
実は蒸留水と精製水は、まったく同じものではありません。
ここでは蒸留水と精製水の違いについて説明していきます。
また、化学の実験や研究に欠かせない、純水と超純水の違いについても見ていきましょう。
蒸留水とは?水蒸気を冷やした液体
蒸留水とは、「蒸留」という方法で作られた水のことで、水蒸気を冷やして得られる液体のことをいいます。
蒸留というのは、沸点の違いを利用した成分の分離方法です。
中学校の理科の授業で学んだはずですが、あまり覚えていない…という方が多いかもしれません。
水道水は沸騰させると気化して水蒸気になります。
その水蒸気が冷えて液体になったものが蒸留水です。
水道水に含まれているミネラルなどの不純物は、沸騰させている水の中に残り、気化はしません。
つまり蒸留水は、不純物が取り除かれている水=精製された水であり、精製水の一種なのです。
精製された水なので飲むことも可能ですが、市販の蒸留水の多くは飲用目的の水ではありません。
医療用器具や精密機器などの洗浄、飲料の原料、化学の実験、バッテリーの補充液などに使われることがほとんどです。
こういった飲用ではない蒸留水は、飲んでも体に害はないとされていますが、購入してまで飲むものではないといえるでしょう。
精製水とは?ミネラルや不純物を除去した水の総称
精製水とは、RO膜(逆浸透膜)やイオン交換樹脂によるろ過、蒸留などの処理をした水のことです。
水道水や地下水に含まれる不純物やミネラルが除去された水の総称が精製水であり、精製方法により以下の4種類にわけられます。
- 蒸留水
- RO水
- イオン交換水
- Elix水
精製方法により除去される成分が異なるため、精製水の使用目的などに合わせて精製方法を組み合わせることもあります。
蒸留水
前述したように、水を沸騰させてできる水蒸気を冷やして、液体に戻したものが蒸留水です。
ミネラルや不純物が除去されています。
RO水
RO水とは、RO膜(逆浸透膜)によるろ過処理がされた水です。
ウォーターサーバーにも利用されているため、ご存じの方も多いでしょう。
RO(Reverse Osmosis)膜とは、海水を淡水化させることもできる特殊なフィルターであり、ミネラルや不純物を取り除いて純度の高い水を精製します。
イオン交換水
イオン交換水とは、イオン交換樹脂によりイオン性の不純物を除去した水です。
イオン交換樹脂には、「陽イオン交換樹脂」と「陰イオン交換樹脂」があり、それぞれ水に含まれる陰イオンと陽イオンを交換します。
イオン交換樹脂を通した水には、ほとんどイオンが含まれていません。
そのため、脱イオン水とも呼ばれます。
イオン交換樹脂は家庭用浄水器にも使われており、水道水に含まれる塩素の除去が可能です。
ただしイオン交換樹脂を通しても、アルコールなどの非電解質(水に溶けても電離しない物質)の分離はできません。
Elix水
Elix水というのは、RO膜とEDI膜(連続イオン交換膜)により精製された水をいいます。
RO膜によるろ過処理で不純物を除去し、EDI膜により不要なイオンを除去してある水です。
飲用目的ではなく、半導体部品などの機器の洗浄や、純度の高い水を使って行う実験などに使用されています。
純水とは?純度の高い水の総称「Pure Water」
純水とは、「無機質」「有機物」「微粒子」「微生物」などの不純物が除去された、純度の高い水のことです。
英語で言うと「Pure Water」で、蒸留水やRO水、イオン交換水、Elix水といった純度の高い水の総称が純水となります。
純水は中性のため、ph値を測定すると理論上は7.0になるはずです。
しかし、実際にph値を測定するのは困難であり、測定したとしても7.0ではなく酸性またはアルカリ性になることがあります。
これは空気中の不純物が溶け込みやすいことが原因で、超純水にも同じことがいえます。
超純水とは?純水を精製した高純度の水「Hungry Water」
超純水とは、純水からさらに不純物を取り除いた水をいい、英語で「Hungry Water」といいます。
これは超純水の「モノを溶かす力」が極めて強いためです。
純水・超純水の違いは、水に含まれる不純物の量の違いなのですが、どの程度の違いがあるのでしょうか。
それぞれの水で50mプールを満たした場合、含まれる不純物の量を以下にまとめました。
水の種類 | 不純物の量 |
---|---|
水道水 | ドラム缶2本分 |
純水 | グラス1杯分 |
超純水 | 小さじ1杯分 |
超純水の不純物量は、東京ドームを満たしたとすると、角砂糖1個分ともいわれます。
純水も超純水も、不純物のひとつであるミネラルが含まれていないため、飲んでも美味しくないと感じることでしょう。
しかし、不純物を含まないということは、赤ちゃんのミルクや料理に安心して使える水ということです。
純水や超純水は、ワイングラスなどの水垢をつけたくないガラス製品のすすぎにも適しているので、グラスのくすみが気になる方は試してみてください。
蒸留水のメリット・デメリットは?
精製水の一種である蒸留水には、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここでは蒸留水を飲むメリット・デメリット、飲用以外に利用するメリット・デメリットを見ていきましょう。
蒸留水のメリット
蒸留水には、不純物がほとんど含まれておらず安全であるというメリットがあります。
前述したように、純水のひとつである蒸留水に含まれる不純物は、水道水と比べるとほんのわずかです。
蒸留水であれば安心して飲むことができますし、大人よりも抵抗力の弱い赤ちゃんのミルク作りにも適しています。
また、蒸留水は水道水と異なり塩素を含まないため、野菜やお米を洗ってもビタミンが失われません。
塩素を含まないことから、飲用、料理の下ごしらえ以外では、肌や髪のケアにおすすめといえます。
蒸留水のデメリット
蒸留水のデメリットは、飲んでも美味しくないこと、長持ちしないことの2つです。
蒸留水は不純物が含まれていないことがメリットですが、ミネラルなどが一切含まれていないため、飲んでも美味しく感じません。
もしも蒸留水を飲用にする場合は、ミネラルウォーターのような美味しさはないということを覚えておくとよいでしょう。
また、蒸留水には塩素が含まれていないため、長持ちさせることができません。
水道水には、ウィルスや細菌の繁殖を防ぐための塩素が含まれています。
蒸留水は塩素が取り除かれた水なので、適切な管理をしないと雑菌が繁殖する可能性が高いです。
作ったばかりの蒸留水や、飲用目的で販売されている蒸留水であれば安全といえますが、基本的に蒸留水は長く保存できないため注意しましょう。
蒸留水は家庭で作れる?ウォーターサーバーのRO水もおすすめ
蒸留水は一般家庭でも作ることができます。
市販の2Lボトル入りの水の価格は約270円~336円、飲用目的の蒸留水の場合は2Lで約412円です。
その点、手作りすれば水の料金は水道代のみなので、非常にリーズナブルに蒸留水を使うことができます。
ここでは鍋を使った蒸留水の作り方と、家庭用浄水器を使った作り方を見ていきましょう。
手作りするのは面倒!という方は、ウォーターサーバーの利用も検討してみてください。
鍋を使う作り方
家庭にあるもので蒸留水を作る場合は、鍋に水道水を入れて沸騰させる方法が一般的です。
まず次のものを用意します。
- 鍋:水道水を沸騰させる
- 鍋の中にすっぽり入るサイズのボウル:蒸留水を溜める
- 鍋のフタ:水蒸気を冷やして蒸留水にする
フタがない場合は、鍋の直径より二回り程度大きい中華鍋などでも可能 - 清潔な容器:蒸留水を保存する
<手順1>鍋に水道水を半分程度入れて、鍋の中の水にボウルを浮かべる
このとき、ボウルが鍋の底につかないようにすることが大切です。
ボウルが浮かない場合は、蒸し器用の台や足つきの金網などをうまく使って、ボウルが鍋の底に触れないように入れましょう。
<手順2>鍋に裏返しの状態にしたフタ、あるいは中華鍋を置き、鍋を火にかける
水道水が沸騰する寸前までは強火にし、沸騰したら中火にしましょう。
<手順3>フタあるいは中華鍋に氷を入れる
氷で冷やすことによって、フタの取っ手側、あるいは中華鍋の底面についた水蒸気が早く液体になります。
<手順4>20分くらいすると鍋の中のボウルに蒸留水が溜まるので、火を止める
火傷に注意して、ボウルに溜まった蒸留水を清潔な容器に移し替えましょう。
<手順5>水道水を足して、同じ作業を繰り返す
蒸留水を移した容器は冷蔵庫で保管しましょう。
この方法で蒸留水を作ると、約2時間で1L程度の蒸留水を溜めることができます。
加熱していた鍋や内部のボウルは非常に高温になっているため、そのまま触ると危険です。
鍋つかみやゴム手袋などを活用し、火傷しないように注意しましょう。
また、鍋を使った方法の場合、空気中の雑菌が蒸留水に混入する可能性が高いです。
清潔な容器に移し替えた後は、できる限り早めに使い切ることをおすすめします。
家庭用蒸留水器による作り方
メガホーム社のメガキャットなど、家庭用の蒸留水器を使って蒸留水を作る方法もあります。
蒸留水の作り方は、水道水を入れてリセットボタンを押すだけと非常にシンプルです。
メガキャット蒸留水器の場合は、1度に最大で4Lの蒸留水を作ることができます。
本体価格は30,000円以上しますが、4Lの蒸留水を作るための電気代は約70円と大変リーズナブルです。
市販の蒸留水を購入し続けるよりも、蒸留水器を購入して家庭で作った方がコスパが高いといえるでしょう。
また、生成された蒸留水は、水道水を入れる容器とは別の容器に溜まる仕組みになっています。
密閉性が高いので、蒸留水へ雑菌が混入する心配はありません。
鍋を使った方法で蒸留水を作るのは火傷しそうで不安…という方は、家庭用蒸留水器の使用を検討してみてください。
ウォーターサーバーを使う方法
鍋でも蒸留水器でも、蒸留水を作ること自体が面倒!という場合は、ウォーターサーバーを使う方法がおすすめです。
蒸留水を扱っているウォーターサーバーには、サニクリーンのディスティオなどがあります。
サニクリーンのディスティオは、独自の蒸留製法により、ミネラルなどの不純物を取り除いた「澄み切った水」です。
赤ちゃんのミルク作りやコーヒーの抽出、料理の下ごしらえなど、さまざまな使い方ができます。
また、蒸留水ではなく、同じ精製水の一種であるRO水を使ったウォーターサーバーを選ぶのもおすすめです。
蒸留水やRO水は、ミネラル成分が取り除かれた水のため、飲んでも美味しく感じません。
そのため、RO水のウォーターサーバーを選ぶ場合は、ミネラルが添加されたタイプを選ぶとよいでしょう。
ミネラルが添加されたRO水ウォーターサーバーには、クリクラやアクアクララ、MCMのめぐみなどがあります。
蒸留水は何に使うといいの?おすすめの使い方はこれ!
次に、蒸留水の使い方についてご紹介します。
蒸留水のおすすめの使い方は次の4つです。
- 飲用水に使う
- スキンケアに使う
- ヘアケアに使う
- アロマスプレーに使う
蒸留水は、飲む以外にもさまざまな使い方があるので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。
飲用水に使う
蒸留水は飲用水として使うことができます。
ただし、市販の蒸留水は飲用目的ではないものがほとんどです。
飲む場合は、飲用目的で販売されている蒸留水や、鍋や蒸留水器などを使って家庭で生成した蒸留水を選びましょう。
蒸留水はミネラルなどの不純物を一切含まない、安心・安全な水なので、抵抗力の弱い赤ちゃんのミルク作りにもおすすめです。
塩素を含まないため、お米を研いだり野菜をゆでたりする水にも向いています。
スキンケアに使う
蒸留水はスキンケアにも使うことができます。
スキンケアの中でもおすすめなのは、蒸留水を使った洗顔、化粧水、パックです。
蒸留水は精製水のひとつであり、物を溶かす力が非常に強い純水でもあります。
蒸留水で洗顔すると、理論上は水道水では落としきれない毛穴の汚れを溶かして落とすため、よりすっきりとした仕上がりになるでしょう。
また蒸留水は、塩素やミネラルなどの不純物を含まないので、化粧水をつける前に肌につけるのもおすすめです。
化粧水の前に蒸留水を使うと、毛穴に入り込んで余分な脂分や汚れを溶かすため、化粧水が肌に浸透しやすくなるといわれています。
肌の乾燥が気になる場合は、ふだん使っている化粧水と蒸留水をブレンドしたものでパックしてみてください。
コットンにしみこませてパッティングする方法や、シートパックを顔に貼っておいてスプレーする方法などがあります。
蒸留水を使ったパックは、市販のパックよりも手軽でリーズナブルなので、お風呂上りの保湿におすすめです。
蒸留水パックをする場合は、コットンが乾いてしまうと意味がないので、3分~5分程度を目安にするとよいでしょう。
化粧水として、あるいはパックとして蒸留水を使った後は、必ず乳液や美容液などでふだんどおりの保湿をおこなってください。
ヘアケアに使う
蒸留水はヘアケアにもおすすめです。
お風呂でシャンプーやコンディショナーを洗い流す水には、水道水を使うのが一般的ではないでしょうか。
水道水には塩素が含まれているため、髪の毛のキューティクルを傷めてしまいます。
そこでおすすめなのが、髪の毛を水道水で洗い流した後に、蒸留水を吹きかける方法です。
スプレーボトルなどに蒸留水を入れておき、お風呂上りの髪にスプレーしましょう。
水道水に含まれる塩素が中和され、髪への負担が少なくなります。
また蒸留水は、髪の毛の寝癖直しにも効果的です。
蒸留水は髪への浸透性が高いため、水道水で濡らすよりも寝癖を直しやすくなります。
がんこな癖毛でお悩みの方は、お風呂上りに蒸留水スプレーをして乾かし、朝もう一度蒸留水スプレーをしてからヘアセットしてみましょう。
寝癖直しにかかる時間がぐっと短くなるので、ぜひ試してみてください。
アロマスプレーに使う
蒸留水を使ってアロマスプレーを作るのもおすすめです。
アロマスプレーは、虫よけ、花粉対策、空気清浄、抗菌・除菌などの効果が期待できます。
蒸留水を使った基本的なアロマスプレーの作り方は次の通りです。
<用意するもの(アロマスプレー50ml分)>
- 蒸留水:約40ml
- 無水エタノール:約10ml
- 精油(エッセンシャルオイル・アロマオイル):約10滴
- ガラス製スプレー容器(遮光性容器)
- ガラスビーカーまたは100ml以上のグラス
- ガラス棒または竹串、マドラーなど
<アロマスプレーの作り方>
アロマスプレーの作り方はとても簡単です。
- ガラスビーカーまたはガラスのグラスに、無水エタノールを10ml入れる
- 精油を約10滴垂らし、ガラス棒やマドラーなどでかき混ぜる
精油は水に溶けないので、無水エタノールに溶かしてから蒸留水と混ぜます。
- 蒸留水を40ml入れてガラス棒などでかき混ぜる
- ガラス製スプレー容器に移し替える
ただし、手作りアロマスプレーは長期間の保存ができません。
1週間~2週間程度で使い切れる量を目安に作ってみてください。
<アロマスプレーの効果別レシピ>
アロマスプレーは、製油(エッセンシャルオイル)の種類により、期待できる効果が異なります。
以下に、期待できる効果別のエッセンシャルオイルをまとめました。
期待できる効果 | エッセンシャルオイル |
---|---|
虫よけ | シトロネラ・ユーカリ・ペパーミント |
花粉対策 | ペパーミント・ユーカリ・レモン |
空気清浄 | ユーカリ・ティートゥリー・サイプレス |
抗菌・除菌・消臭 | ティートゥリー・レモングラス・ペパーミント |
蒸留水を使うときの注意点は?
最後に、蒸留水を使うときの注意点についてご紹介します。
蒸留水を毎日の生活に取り入れるためにも、次の点を覚えておきましょう。
- 長期保存はできない
- 保湿作用はない
それぞれ説明していきます。
蒸留水は長期保存できない
蒸留水は水道水と異なり、長期間の保存ができません。
塩素が含まれていないため、雑菌が混入するとどんどん増えてしまう可能性があるからです。
蒸留水を手作りした場合は、保存可能な容器に入れて冷蔵庫で保管する必要がありますが、3日を目安に使い切りましょう。
市販の蒸留水の場合も、容器を開封したら冷蔵庫で保管し、早めに使い切ることが大切です。
また、蒸留水を使った化粧水も同様で、長期保存はできません。
万が一容器の中に汚れや濁りなどが見られた場合は、使用せずに廃棄することをおすすめします。
蒸留水に保湿作用はない
蒸留水を使ったスキンケア・ヘアケアの方法をご紹介しましたが、蒸留水そのものに保湿作用はないので注意が必要です。
保湿目的で蒸留水を使う場合は、保湿成分を含む化粧品やヘアケア製品などと併用しましょう。
スキンケアの場合は、保湿作用のある化粧水や乳液、美容液など、ヘアケアの場合は洗い流さないタイプのトリートメント剤などがおすすめです。
蒸留水のみでケアすると、肌や髪の水分が失われやすくなってしまうので、必ず保湿成分とセットで使うようにしてください。
蒸留水の正しい使い方を覚えて潤いのある毎日を送ろう
今回は、蒸留水についてご紹介しました。
蒸留水は水蒸気を冷やして得られる水のことで、精製水の一つです。
塩素はもちろん、ミネラルなどの不純物を一切含まない水で、純水の一つでもあります。
不純物を含まないため、安心して飲んだり肌につけたりできますが、蒸留水に保湿効果はなく、長期間の保存はできません。
ご紹介したような蒸留水の使い方を覚え、毎日の生活に潤いを与えてみてはいかがでしょうか。